ルリボシカミキリの青/福岡伸一

『ルリボシカミキリの青』著福岡伸一、読みました。

生物学者である福岡伸一さんが『週刊文春』で連載しているコラム『福岡ハカセのパラレルターン・パラドックス』を再編集して、まとめたものである。

すごく面白かったです。日常的な風邪や花粉や蜂だったりを生物学的な話と絡めていて、興味深い。
ひとつの物事をこういうふうに違った視点で見ることができるのはすごいなと思った。
科学的な話以外でも、入試問題作成の話だったり、福岡ハカセの少年時代の話だったり、いろいろと面白いです。
本当に文章が上手くて、読みやすいです。『生物と無生物のあいだ』ほど専門的な生物の話はないので、軽く読めていいですね。
福岡伸一さんの文章は好きです。


ひとつのことをずっと好きでいること。学ぶということ。その情熱。

子どものころからずっと好きなもの。
僕はなんだろうか。いろいろあるような気もするけど、なにもないような気もする。
それはちょっと悲しいなあ。昔はいろいろと好奇心旺盛な子供だったような気もする。


最後にプロローグにある文章を引用。

 あるいは君は、ある日の夕方、ふと空を見上げると沈みかけた夕陽に照らされてたなびく雲が流れてゆくのを眺めるときがある。ちぎれた細い雲の先の空は、もう群青色におおわれて、青がすっかり濃くなっている。そこに君は小さな星がまたたいているのに気づく。またたく星は、風にかきけされそうだけど、わずかな輝きは失われることがない。でもその光は果てしなく遠くにある。君はその時の、そんな気持ちを忘れないでいてほしい。それは時を経て、くりかえし君の上にあらわれる。それはいつか読んだ小説の中にもあったし、山崎まさよしの歌の中にもある。あるいは一千二百年前の万葉集の中にでも。
 調べる。行ってみる。確かめる。また調べる。可能性を考える。実験してみる。失われてしまったものに思いを馳せる。耳をすませる。目を凝らす。風に吹かれる。そのひとつひとつが、君に世界の記述のしかたを教える。
 私はたまたま虫好きが嵩じて生物学者になったけれど、今、君が好きなことがそのまま職業に通じる必要は全くないんだ。大切なのは、何かひとつ好きなことがあること、そしてその好きなことがずっと好きであり続けられることの旅程が、驚くほど豊かで、君を一瞬たりともあきさせることがないということ。そしてそれは静かに君を励ましつづける。最後の最後まで励ましつづける。


ルリボシカミキリの青

ルリボシカミキリの青