秋期限定栗きんとん事件/米澤穂信

秋期限定栗きんとん事件』著米澤穂信、読みました。

<放課後五時半に ひとりで教室に来てください まってます>
船戸高校に通う、ぼく、小鳩常悟郎の机の中に入っていた一枚の紙片。教室で待っていたのは一人の女子生徒であった。彼女はぼくに告白し、ぼくは彼女とつきあうことにした。
そうして、ぼくの幸せな高校生活が始まった。

今回は小鳩くん以外にもう一人、瓜野くんの視点でも物語は進行する。
瓜野くんは新聞部の一年生。彼は木良市で頻発する小規模な放火事件にある共通項を見出し、連続放火事件を追うようになる。皆が驚くような記事を書いてやる、と意気込む瓜野くん。それは、瓜野高彦という名を船高史に刻むため。もう一つは、彼女にいいところを見せたいからだ。そう、彼女である小佐内ゆきに!

小市民シリーズ第3弾。前作で「互恵関係」をやめて、別れた小鳩くんと小佐内さん。今作は、「夏期限定トロピカルパフェ事件」後の高二の秋から、高三の秋までの1年間を追う。

やっぱり面白いですね。小市民を目指す小鳩くんと小佐内さん。そして、今回のもう一人の主人公、脱小市民を目指す新聞部の瓜野くん。
何かを成しとげよう頑張る瓜野くんを応援したくなる。すこし空回りしてるし、小佐内さんや小鳩くん、堂島健吾にも敵わない感じがちょっとかわいそうでもある。女の子のために頑張る男の子、という甘酸っぱい青春の爽やか構図なのに、どこからかえぐみのある思わず顔をしかめてしまいたくなるような構図になっていた。
青春のえぐみ。


小鳩くん視点の仲丸さんとのデート中の日常の謎も面白いですね。誰がバスの降車ボタンを押したのか。仲丸さんがサーモンのあつあつクリームパスタを注文した理由。ついつい頭を働かせてしまう小鳩くん。

そして、今回も小佐内さんがかわいくて、ちょっと怖い。いや、だいぶ怖い。

「マロングラッセはね、栗を煮て、剥いて、シロップに漬けるの。そうするとね、栗を覆う砂糖の膜ができる」
「甘い衣の上に衣をまとって、何枚も重ね着していって。そうしていくうちにね、栗そのものも、いつかキャンディーみたいに甘くなってしまう。本当はそんなに甘くなかったはずなのに、甘いのは衣だけだったはずなのに。上辺が本性にすり替わる。手段はいつか目的になる。……わたし、マロングラッセって大好き。だってほら、なんだかかわいいでしょ?」

残り少ない高校生活、冬期限定〜で二人の関係はどのように変わるのでしょうか。
楽しみだ。すごく。

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)