海がきこえるⅡ アイがあるから/氷室冴子
あらすじ
大学1年の夏、杜崎拓は故郷高知に帰省した。親友・松野と里伽子のわだかまりも解け、気分よく東京に戻った拓の部屋に、年上の女性、津村知沙が入り込み泥酔し寝ていた。「その年上の女、たたるぞ」という松野の言葉が拓の脳裏に甦る。不倫の恋に傷ついた知沙。離婚した父とその再婚相手との間で傷つく里伽子。どうしたら人は人を守れるのだろう?さまざまな思いと痛みが交錯しながら拓は東京ではじめての冬を迎える―。
『海がきこえる』の続編。
面白かったです。近藤勝也さんの絵も相変わらずとても素敵です。
前作の青春小説と違って、なんだかアイが痛々しいです。拓と里伽子の関係だけでなく、津村智沙や先輩の田坂浩一、里伽子の父の不倫相手の美香さん。東京での生活で拓は右往左往し、里伽子や智沙に振り回されながも、成長し、里佳子との関係もほんのり進展(?)する。
それにしても、津村智沙が痛々しくてつらい。智沙の、相手の男の、その妻の、田坂先輩のアイがつらい。どこにも悪役がいないだけに。いや、相手の男が悪いといえば悪いんだけど。その男にもアイがあって憎み切れない。
「ぼくらはみんなにアイがあるわけじゃないよ。あったほうがいいけど。アイがあったほうがいいってことを、こういうことで覚えていくんだ、たぶん。だから、もういいよ。寝ろよ」
一方でとても悲しい辛いことがあって、けれど一方ではちゃんと現実の小さな楽しみもあって、そうやって何かが動いていくのだ。美香さんはいまはベッドで寝ているけれど、きっと、そのうちまた、現実のばかばかしいくらい小さい楽しみや、嬉しいことに出会って、元気になってくれるといい。と、そんなことをほんとに心から思った。
みんなが楽しくハッピーというのは、なかなか難しいけれど、誰かが誰かにアイされて、アイして、つらかったことも、いずれ“いい想い出”みたいなものになればいいなと思います。
人をアイすることは、ときに辛く苦しいけれど、やっぱり素敵なことなんだなと思いました。
いのちィ、みじかしィ、恋せよォ、乙女ェ〜
です。
ああ、恋愛したい!
- 作者: 氷室冴子
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