海がきこえる/氷室冴子

氷室冴子さんの『海がきこえる』読みました。

あらすじ

高知から東京の大学へと進学するために東京へ引っ越してきた杜崎拓。かつてのクラスメートのアサシオからの電話で、武藤里伽子の名前が出てくる。ふと思い出す。高知のこと、学校のこと、武藤里伽子のことを。

ジブリのアニメの方は見てますが、なんだか原作も読みたくなって読みました。
すごく爽やかですね。アニメにはない拓の大学生活のことや、振り返って気づくそのときの気持ち、里伽子の寂しさなんかが描かれていて、原作も面白いです!


とにかく里伽子に振り回されっぱなしの拓。改めて読んでみると、ほんと里伽子はわがままでイヤな女ですね(笑)

意地っ張りで、自分勝手で、イヤな奴で。


ああ、甘ずっぱい高校時代。自分の高校時代とか、好きだった人のこととか思い出します。決してこんな爽やかな高校時代の想い出なんてないんですけどね。

20年も前の作品ですが、高校時代の素直になれない気持ちとか、好きな人、嫌いな人のこと、将来のこと、友達のこと、そういうことを考えてやきもきするのは時代が変わっても変わらないものだと思います。
そういうもの含めて甘ずっぱくて、切ない。

そして、高校を卒業し、地元を離れての大学生活。少しずつ大人になって、世界が広がって、素直になって。
まあ、時間が経てば、喧嘩したことも懐かしい想い出ですね。



ネタバレになるんですが、東京で拓と里伽子は再開します。そして拓が里伽子に告白するんですが、なんだかそのシーンがすごく好きです。

「あたし、わがままなのよ、きっと」
 里伽子は驚くほどの心理をいって、黙りこんだ。まったく驚くべき素直さだ。おかげで、ぼくも素直になれそうな気がした。
「まあ、わがままはわがままだ。けど、ぼくは武藤が好きだったよ、ずっと」
「ああ、そう」
里伽子は無感動に唸った。そのまま、またウンともスンともいわずにボーッとして、熱で潤んだ目をぼんやり宙にさまよわせていた。


もう一つ。拓が東京から実家へ帰省したときの描写も好きです。

 ボストンをもって玄関に入ろうとして、ふと、左手に広がる海が目にはいった。
 家はボロくても眺望だけはいい坂上のぼくの家からは、土佐湾があまりにもきれいに見渡せるのだ。
(あー、帰ってきたなー)
 夏の陽盛りの光をいっぱいに反射して、きらきらと光っている海に、黄色の帆をはったヨットが滑っていた。対岸に建っている金持ち相手のマンションに、東京や大阪から医者や弁護士がきていて、ヨット遊びをしているのだろう。海はおだやかに光っていた。

爽やかな海の音が聞こえてきそうですね。実家に帰省した時のなんとも言えない懐かしと安心感に包まれる感じです。


まあ、とにかくなんだかんだ言って、僕は里伽子が、海がきこえるが、好きなんです。

海がきこえる (徳間文庫)

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