手紙/東野圭吾

東野圭吾の『手紙』読みました。

あらすじ

兄・剛志は弟・直貴の大学進学費用のために強盗殺人をやった。そして、弟は『殺人犯の弟』というレッテルを貼られて生きていく。
掴みかけた夢も、幸せも『殺人犯の弟』というレッテルによって、それは弟、直貴の元を去っていく。

やっぱり東野圭吾は面白いですね。久しぶりに小説で号泣しました。
小説の中で、ジョン・レノンの『イマジン』が何度か出てきます。
「差別や偏見のない世界を想像してごらん」と。

それに対して、現実ではどうしようもなく存在する差別と偏見。
直貴は何度も差別と偏見にあい、それでも幸せを求め、決断する。

差別、逆差別とは何かという問題を読者に突き付けてくる。

犯罪を犯すこと、自分を含めて人を殺すこと、その罪についていろいろ考えさせられます。

ちょっと登場人物の言葉を引用します。

「まさにそれだよ。人には繋がりがある。愛だったり、友情だったりするわけだ。それを無断で断ち切ることなど誰もしてはならない。だから殺人は絶対にしてはならないのだ。そういう意味では自殺もまた悪なんだ。自殺とは、自分を殺すことなんだ。たとえ自分がそれでいいと思っても、周りの者もそれを望んでいるとはかぎらない。君のお兄さんはいわば自殺をしたようなものだよ。社会的な死を選んだわけだ。しかしそれによって残された君がどんなに苦しむか考えなかった。衝動的では済まされない。君が今受けている苦難もひっくるめて、君のお兄さんが犯した罪の刑なんだ」


兄と弟と手紙。どうしようもなく辛く、切ない。

手紙 (文春文庫)

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