遠まわりする雛/米澤穂信
米澤穂信さんの『遠まわりする雛』読みました。甘くてほろにがーーーい!!!
あらすじ
省エネをモットーとする折木奉太郎は“古典部”部員・千反田えるの頼みで、地元の祭事「生き雛まつり」へ参加する。十二単をまとった「生き雛」が町を練り歩くという祭りだが、連絡の手違いで開催が危ぶまれる事態に。千反田の機転で祭事は無事に執り行われたが、その「手違い」が気になる彼女は奉太郎とともに真相を推理する―。あざやかな謎と春に揺れる心がまぶしい表題作ほか“古典部”を過ぎゆく1年を描いた全7編。
ということで、“古典部シリーズ”4作目です。
今回は、奉太郎が神山高校に入学し、古典部に入部してからの後の1年を描いた連続短編。
「やるべきことなら手短に」
「大罪を犯す」
「正体見たり」
「心あたりのある者は」
「あきましておめでとう」
「手作りチョコレート事件」
「遠まわりする雛」
以上7編。
一年を通して、段々と変わっていく古典部の関係性。
入学当初、まだぎこちなかった千反田と奉太郎の関係。それが、時間の経過とともに、微妙に変わっていく。
この二人だけでなく、古典部の面々の関係や心情がゆっくりと、季節が移ろいゆくように変わっていきます。里志と摩耶花、奉太郎と里志。
変わっていく時間が甘酸っぱかったり、でもほろ苦さもあり。
奉太郎の信条とするところの「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことならば手短に」。千反田と「わたし、気になります!」という言葉と共に、その信条も変わっていき、奉太郎自身も変わっていく。はじめは千反田に対して苦手意識さえ持っていたのに、1年後にはどうしたことか!
それは奉太郎だけに限ったことではなく、里志の「こだわらないことにこだわる」という信条も今回一つの事件で大きく揺さぶれてます。自分の信条とするところ。その通りに行動したくても、出来ないもどかしさ。言いたいことが言えないもどかしさ。青春の苦味。
誰しもが持つ、くだらなくてもいい自分の信条とするもの。それは人と関わることで、ぶつかったり、頼られたりして、段々と変わっていくものかもしれません。
個々のストーリーに関しては、「心あたりのある者は」が一番面白かったです。なかなかこれはすごいなと思いました。
『十月三十一日、駅前の巧文堂で買い物をした心あたりのある者は、至急、職員室柴崎のところまできなさい』と放課後、校内放送がされる。この放送について奉太郎と千反田でひとつのゲームをする…。
奉太郎と千反田の楽しそうな掛け合いと推理が面白い。
他の話がミステリー的推理要素が薄い分、この話はとくに推理的に面白く感じた。
今後、2年へと進級した奉太郎たちに待ち受けるものとは!次巻『ふたりの距離の概算』も楽しみです!
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