龍時01-02/野沢尚

龍時01-02」著野沢尚、読みました。

 志野リュウジはスペインU-17代表との親善マッチ試合に日本選抜選手として急遽招集された。そこでスペインサッカーと日本サッカーの違いを見せつけられる。相手に恐怖心を抱かせるサッカー。それがスペインサッカーだった。リュウジは日本の組織的サッカーに嫌気がさしてくる。そこにスペインのクラブチームからリュウジへの誘いが来る。リュウジは単身スペインへ渡る決意をする。


いやー、ものすごく面白かったです。さすが脚本家というべきか。
リュウジが見ている情景が容易に頭に浮かんできます。構成も見事ですね。
とくにサッカー試合中の熱気、息遣い、飛び散る汗。自分がピッチ上に立っているような気分になります。


家族のこと、リュウジの丁寧な心理描写、血と国。
ただサッカーするのではなくて、その背後の情景、自分が背負うもの、決断をすること、リュウジの成長がしっかり描かれていて、まさにサッカー小説の金字塔と言って過言ではないと思いました。


命を燃やして、命を削って、何かに熱中に取り組む。一瞬一瞬に命を賭ける。
僕にはそこまでしてやりたいことが何かあるだろうか。見つかるだろうか。
著者の野沢尚さんも、リュウジのように命を燃やして脚本や小説を書いていたのだろうか。毎作品、それだけの熱量を感じる作品だったように思われる。
そういうところが僕が野沢尚に惹かれていた理由かもしれない。


文庫本あとがきより以下を抜粋。

 僕らは彼らの苦しみを決して共有できない。僕らは、彼らが苦しむサッカーを楽しんでいる。ここにスポーツというものの残酷なる真理がある。

日本サッカーが盛り上がって、ネットなんかで「本田△」なんていって楽しんでいるけれど、それは本田圭佑選手や代表選手たちの並々ならぬ努力と苦労のたまものなのだ。その努力や苦労、代表に選ばれるプレッシャー、そういうものを僕らは決して共有できない。傍から彼らの苦労を楽しんでいる。苦しみを応援しているのだ。

もしかしたら、小説も同じかもしれない。
本を読んだとき、そこに作者が苦しみながら書く姿を想像して楽しんでいるのかもしれない。そうだとすると、小説もなかなかに残酷なものですね。


本田圭佑とか長谷部誠長友佑都とか海外クラブチームで頑張る選手はすごいですね。
リュージのように高校生で海外に行った宮市亮とかもすごいですね。しかも、イケメン。いや、それは関係ないですね。
僕が高校生のときにも、クラスメートがサッカー留学でブラジルに行った人がいました。
ぼんやり過ごしていた僕にとっては、ほんとに海の彼方のような人です。
そうやって努力して、前進していく人はすごいですね。
僕も少しずつでも前進していきたいものです。


スペインに渡って、少しずつ活躍するようになってきたリュウジ。果たして、次巻ではどのような苦難と成長をするのでしょうか。
次巻も楽しみです。


龍時 01-02 文春文庫

龍時 01-02 文春文庫