ボトルネック/米澤穂信
兄が死んだとき、僕は東尋坊の崖の前にいた。諏訪ノゾミの弔いをするために。彼女は2年前この崖から落ちて死んだ。
そのとき、僕は突然の強い眩暈に襲われ、崖から落ちた。
気がついたとき、そこは見慣れた金沢の町だった。なんだか不思議に思いながらも、家に帰ると、そこには僕の知らない僕の姉がいた。
どうやらここは、「僕の生まれなかった世界」らしい。
ミステリー的な要素は薄いけれども、さりげなく伏線を張り、しっかり回収するところはさすがですね。さっくり読めて面白かったです。後味はあんまりよくないですけど。
主人公の嵯峨野リョウと姉のサキのキャラはいいですね。二人の掛け合いは好きです。
とくにサキの開けっぴろげな性格はこの本を読んでて唯一救われる部分のように感じる。
そして、それが逆にリョウにとってはとても残酷な話になるとこも上手いですね。
「ボトルネック」
瓶の首は細くなっていて、水の流れを妨げる。
そこから、システム全体の効率を上げる場合の妨げとなる部分のことをボトルネックと呼ぶ。全体の向上のためには、まずボトルネックを排除しなければならない。
本作で象徴的なものとしてイチョウの木の存在があります。
イチョウの木がある世界とない世界。
「まあ、良し悪しだよ。確かにあたしが事故って爺さんは助かったかもしれないけどさ。道が広がったおかげで車が増えて、ここ結構危なくなってるしね」
「想像して。昨日できなかったことも、今日はわからない」
僕もどちらかというと、リョウみたいになんでも受け入れていくタイプなんで、読んでいてなかなかきついものはありました。
最後をどう想像するかは読者しだい。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/09/29
- メディア: 文庫
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